病6-2版_立ち読み
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●抗菌スペクトル:antibacterial spectrum ●選択毒性:selective toxicity ●薬物動態:pharmacokinetics ●経験的化学療法/エンピリック治療:empiric chemotherapy ●薬剤耐性菌:drug resistant bacteria*軽症例など原因菌判明まで抗菌薬投与を待てる場合は,培養・薬剤感受性試験の結果が出てから(確定診断後)投与を開始する. ●重症例や緊急例などで原因菌判明前に抗菌薬投与が必要な場合は,感染部位や患者背景から推定される原因菌を幅広くカバーする抗菌薬(主に広域抗菌薬)を投与する*.●投与前に必ず培養検査などのための検体を採取する〔p.153〕.●ある抗菌薬が抗菌活性を有する微生物の範囲を抗菌スペクトル(スペクトル/抗菌域)という.●多種の細菌に対して有効な抗菌薬を広域〔スペクトル〕抗菌薬とよぶ.カルバペネム系●選択毒性とは,ある薬物がそのターゲット(抗菌薬であれば細菌)に対して選択的に毒●抗菌薬は宿主(ヒト)に影響を与えず,細菌のみに作用することが望ましいため,この●細菌感染症に抗菌薬を用いる場合,基本的には次のようなながれで抗菌薬を選ぶ.●スペクトルが適正であればどの抗菌薬でもよいわけではなく,薬物動態などを理解して●ヒトへの毒性も高い(副作用が多い).●ヒトの細胞と細菌の構造や酵素などの違いを利用した選択毒性の高い抗菌薬を開発,使用することが望ましい.抗菌薬抗菌薬●ヒトの細胞には細胞壁がないため,●ヒトのリボソームは細菌と異なる(沈降係数80S)ため,作用しにくい.●ヒトのⅡ型トポイソメラーゼは構造●ヒトは体内で葉酸を合成せずに食物から摂取するため,作用しにくい.●ヒトの細胞膜にもリン脂質があるため,抗菌薬が作用し,影響を受けやすい.●細菌のみに作用し,ヒトへの毒性が理高い低い ●原因菌に有効なスペクトルの狭い抗菌薬に切り換え(de-escalation),175An Illustrated Reference Guide薬,ニューキノロン系薬などがこれに当たる.スペクトルが狭域グラム(+)グラム(−)球菌桿菌球菌スペクトルが広域性を発揮することをいう.選択毒性の考え方が重要になる.抗菌薬細胞壁合成阻害薬タンパク質合成阻害薬核酸合成阻害薬葉酸合成阻害薬ヒト細胞細胞膜機能障害薬投与する必要がある〔p.176〕.デ・エスカレーショングラム(−)特殊な細菌桿菌細菌への作用部位細胞壁のペプチドグリカン層リボソーム(沈降係数70S)Ⅱ型トポイソメラーゼ葉酸合成酵素細胞膜のリン脂質や外膜のリポ多糖体広域の抗菌薬は抗菌活性が強いと勘違いされがちですが,スペクトルと抗菌活性は相関しません.例えば,ベンジルペニシリンはスペクトルが狭いですが,有効な菌種に対する抗菌活性はとても強いです.また,薬剤耐性や副作用,薬物動態などとの兼ね合いから,スペクトルがそのまま適応菌種となるわけではありません.ヒトの細胞への影響作用しにくい.が異なるため,作用しにくい.原因菌がわからないため,推定菌を広くカバーする原因菌がわかり次第,ピンポイントで攻撃する 抗菌活性とは相関しない スペクトル大まかなスペクトルの比較 高ければ副作用が少ない 選択毒性 初期治療から最適治療へ 抗菌薬の選択スペクトルが狭い薬(例:ベンジルペニシリン)グラム(+)スペクトルが広い薬(例:レボフロキサシン)選択毒性細菌論上低い(副作用が少ない).初期治療(経験的化学療法/エンピリック治療)培養および薬剤感受性試験の結果判明後最適治療(標的治療)適切な期間(疾患,原因菌により異なる)投与する.抗菌薬を適切に使用することによって,薬剤耐性菌の出現防止や医療費の抑制,治療成功率の上昇,副作用発生の低下につながります.上記のながれは細菌感染症だけでなく,真菌などによる感染症の場合でもほぼ同じなので覚えておきましょう.バレた!

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