病2-5版_web立ち読み_210204
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●確定診断のため,血液検査で心筋トロポニン上昇を確認する.●鑑別診断と重症度診断のため,胸部X線検査,心エコーを行う.治療診断と初期治療を迅速に進め,適切に再灌流療法を行う.⒈初期治療:必要に応じて,塩酸モルヒネの静注,酸素投与,●急性心筋梗塞(AMI):acutemyocardialinfarction ●非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS):non-STelevationacutecoronarysyndrome ●ST上昇型心筋梗塞(STEMI):STelevationmyocardialinfarction ●非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI):non-STelevationmyocardialinfarction ●経皮的冠動脈インターベンション(PCI):percutaneouscoronaryintervention ●組織〔型〕プラスミノーゲン活性化因子(t-PA):tissueplasminogenactivator ●冠動脈バイパス術(CABG):coronaryarterybypassgrafting●発症後,長時間(1ヵ月以上)経過した心筋梗塞を,陳旧性心筋梗塞という.●聴診〔p.45〕では心不全を合併するとⅢ音および湿性ラ音を聴取する.他に,心尖部での収縮期雑音(心筋壊死が乳頭筋に及び,僧帽弁閉鎖不全〔MR〕となった場合)や心膜摩擦音〔p.262〕(心筋梗塞後に心膜炎を発症した場合)を聴取することがある.●心筋トロポニンの評価は,ベッドサイドにおいては心筋トロポニンT迅速測定法〔p.148〕が有用である.また,近年は高感度心筋トロポニン測定も行われるようになり,発症後2時間以内の超急性期の診断にも用いられる.148GRACEリスクスコア 〔p.156〕ACSにおいて,8つの危険因子から入院時および6ヵ月後までに予測される死亡率や心筋梗塞発症率を算出するスコアリング法.年齢や心拍数,Killip分類〔p.124〕などの危険因子に点数をふり,合計点からリスクを層別化する.これまで提唱されていたTIMIスコアよりも精度が高いとされている.5Aアプローチ 〔p.159〕禁煙に向けた,5つのアプローチの頭文字をとったもの.Ask(喫煙状況の確認),Advise(禁煙を促す),Assess(意思の評価),Assist(禁煙支援),Arrange(診療予定を立てる)からなる〔病④p.350〕.急性心筋梗塞(AMI) 〔p.148〕冠動脈血流の急激な減少によって心筋の壊死をきたした病態.診断や治療の進め方の違いによってST上昇型心筋梗塞(STEMI)と非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)に分類される.心筋トロポニンI 〔p.153〕心筋トロポニンTと同じく,心筋バイオマーカーとして有用な心筋筋原線維の構造蛋白の一つ.二峰性の上昇を示す心筋トロポニンTと異なり,一峰性の上昇を示し,ACSの超急性期ではより反応性が高いとする報告もある.心筋トロポニンT 迅速測定法 〔p.148〕ベッドサイドで行うことができる心筋トロポニンTの迅速測定法.採血した血液を機器に滴下して陽性か陰性か定性する.採血後10〜12分で結果が得られ,ACSの診断や治療方針の決定,リスク評価に有用である.Ⅰ24.9Ⅰ20.0Ⅰ21➡急性冠症候群(ACS)を考える.●心電図で持続的なST上昇がある場合は,血液検査の結果を待たずに再灌流療法を検討する.急性冠症候群(ACS)は,不安定狭心症,急性心筋梗塞(AMI),虚血による心臓突然死などを包括する疾患概念で,冠動脈が急速に狭窄あるいは閉塞することにより心筋が虚血,壊死に陥る症候群である.現在は治療方針の決定に即した非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS),ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に分類して診療が行われる.ST上昇あるいはST低下を認める.硝酸薬の舌下投与や静注(速効型製剤),アスピリンの服用などを行う.〈ST上昇型心筋梗塞〉intro.MINIMUM ESSENCE❶高血圧,糖尿病,脂質異常症,喫煙,高齢などの冠危険因子がある.❷労作時・安静時を問わない前胸部・胸骨後部の胸痛.❸胸痛が数分〜15分以上持続.❹心電図で,陰性T波,陰性U波,QRS幅の拡大,⒉再灌流療法:(冠動脈の閉塞解除➡血流回復)a.経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が第一選択b.STEMIでPCIが緊急に行えない場合は,血栓溶解療法(t-PA製剤の静注)c.PCIが無効な例には,冠動脈バイパス術(CABG)の考慮⒊症例や治療内容に応じて薬物療法の追加・継続a.抗血小板薬:アスピリン,クロピドグレル,プラスグレルb.抗狭心症薬:β遮断薬,硝酸薬,Ca拮抗薬c.スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)d.ACE阻害薬またはARB,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)⒋不整脈や心不全,脳梗塞などの合併症に対する対処・治療⒌心臓リハビリテーション,禁煙指導や体重管理などによる二次予防ACS:acute coronary syndrome監修上妻 謙急性冠症候群(ACS)

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