病13-1版_web立ち読み_201201
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●左上顎洞とその周囲を満たす内部不均一な軟部組織陰影(■)がみられる.この病変は上顎洞周囲の骨破壊に伴って,左鼻腔,左篩骨洞,顔面の皮下,口腔内に進展(浸潤)している.W■■■■■eber法(Weber-Ferguson切開) 〔p.196〕鼻下部から外鼻側縁,下眼瞼下部に沿って皮膚切開を行う方法であり,上顎骨・頬骨部分の腫瘍に用いられる.●上顎洞癌:maxillary〔sinus〕cancer ●扁平上皮癌:squamous cell carcinoma ●複視:diplopia/double vision ●眼球偏倚:ocular deviation ●呼吸上皮:respiratory epithelium ●鼻出血:epistaxis/nasal bleeding ●血性鼻漏:bloody rhinorrhea/sanguineous nasal discharge ●鼻閉:nasal obstruction ●流涙:dacryorrhea ●眼球偏位:ocular deviation ●組織型は80〜90%の患者で扁平上皮癌であり,他に腺癌,腺様囊胞癌などもみら●正常な副鼻腔粘膜は多列円柱上皮(呼吸上皮)〔p.131〕であるが,慢性炎症により扁●CTでは軟部組織陰影(腫瘤影)を示し,骨破壊の有無や病変の●そのため,上顎洞癌の発症要因として慢性副鼻腔炎が考えられており,近年,慢性●MRIでは病変内部の性状をより詳細に評価でき,鑑別診断に有用である.また,腫瘍と二次的な炎●鑑別診断として片側性の上顎洞病変を示す疾患である副鼻腔真菌症〔p.184〕,歯性上顎洞炎〔p.190〕,194An Illustrated Reference Guide頭蓋篩骨洞眼窩上顎洞鼻腔下鼻甲介監修近藤 健二 病変の進展と骨破壊をみる CT像単純CT像,骨条件冠状断症の判別も可能である.術後性上顎囊胞〔p.192〕,内反性乳頭腫〔p.197〕などが挙げられる.C31.0歯痛,眼球偏位,複視などがみられる.上顎洞に発生する上皮性悪性腫瘍(癌)で,上顎洞癌または上顎癌とよばれる.鼻・副鼻腔悪性腫瘍の半数以上を占め,組織型は扁平上皮癌が大多数を占める(上顎扁平上皮癌).早期は症状が乏しいが,進行すると癌の進展方向により様々な症状を呈する.頸部リンパ節転移は末期まで出現しにくい.れる.平上皮化生が生じ,扁平上皮癌が発生すると考えられている.副鼻腔炎の罹患率の低下とともに上顎洞癌も減少傾向にある.進展範囲を評価するのに有用である.頭蓋底手術から進展範囲に応じて選択.maxillary 〔sinus〕 cancer〈男女比 2:1〉〈癌の進展方向に応じた症状が出現〉〈症状出現時にはすでに進行〉intro.MINIMUM ESSENCE❶好発:中高年の男性 ❷片側性の悪臭を伴う鼻漏,鼻出血,鼻閉,頬部腫脹(顔面変形), ❸X線検査やCTで片側性の上顎洞病変がみられ,骨破壊像 (進行期にみられる)を伴い,周囲に拡大している.➡上顎洞癌を考える.●鑑別診断にはMRIが有用.●生検による組織診断が確定診断となる(組織型は扁平上皮癌であることが多い).治療手術療法,放射線療法,化学療法を組み合わせた集学的治療●手術療法:上顎部分切除術,上顎全摘術,上顎拡大全摘術, ※放射線療法および化学療法を術前や術後に行うのが一般的.上顎洞癌

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