薬4-1版_立ち読み
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薬物動態学吸収●小腸は全消化管の4/5の長さを占める最長の消化管である.生理学的には主に食物に含まれる栄養素や水分の消化・吸収を担っており,薬物を含めた様々な物質を吸収する.●小腸には輪状ひだ(ケルクリングひだ),絨毛,微絨毛がある.これらの構造により,小腸の表面積は腸管腔を単なる円筒と仮定した場合の約600倍になり,吸収効率が良くなっている.●小腸の構造のうち,薬物吸収において重要なのは,❶粘膜筋板,❷粘膜固有層,❸小腸上皮細胞の3つである.●非撹拌水層の存在は,小腸でpH分配仮説が当てはまりにくい原因の一つと考えられている〔p.66〕.Pharmacology vol.4 : An Illustrated Reference Guide小腸輪状ひだ輪状ひだ(ケルクリングひだ)孤立リンパ小節 絨毛 血管粘膜固有層粘膜筋板粘膜下層内輪走筋外縦走筋 漿膜マイスナー神経叢●❶粘膜筋板絨毛の動きに関係する.グリコカリックスは,水分の保持の他,消化管内の物質を吸着して消化・吸収しやすくする役割や,消化液による自己消化から細胞を保護する役割を有しています.さかずき 杯細胞 エンテロクロマフィン細胞陰窩小腸は十二指腸,空腸,回腸に分けられ,それぞれ輪状ひだの高さや密度,免疫関連組織の発達具合などが異なりますが,基本的な構造は同じです.粘膜固有層アウエルバッハ神経叢パネート細胞動脈●❷粘膜固有層血管やリンパ管,神経が豊富に存在している.栄養素,水分,薬物などを吸収し,生体内循環系へ届ける.生理学者消化管腔非撹拌水層細胞膜グリコカリックス血管医師小腸上皮細胞拡大図アクチンフィラメントグリコカリックス(糖衣)血管●❸小腸上皮細胞細胞膜の透過が律速段階物質透過 吸収効率が非常に良い 小腸の構造 脂溶性薬物吸収の障壁となる 非撹拌水層と薬物吸収●腸管表面には水の層があり,蠕動運動〔薬③p.4〕や絨毛の動きによりある程度撹拌されている.しかし細胞膜付近には,腸管運動によって撹拌されない,流動性が抑えられた水層が存在する.これを非撹拌水層という.●非撹拌水層は小腸上皮細胞表面のグリコカリックス(糖衣)が水分を保持することにより形成されており,その厚さは20〜120μmである.●薬物が単純拡散により吸収されるには,水溶性(溶解性)と脂溶性(膜透過性)の両立が必要となる〔p.64〕.比較的脂溶性が高い薬物は,細胞膜は透過しやすいが非撹拌水層に溶けにくいため,非撹拌水層の透過が律速となる.75絨毛拡大図 微絨毛非撹拌水層〔次項〕 刷子縁膜 密着結合(タイトジャンクション) 接着結合デスモソーム ギャップ結合基底膜 静脈リンパ管物質を様々な膜透過機構〔p.62〕で透過させ,血管やリンパ管へ届ける.脂溶性が高い薬物水溶性が高い薬物非撹拌水層の透過が律速段階〔p.72〕小腸上皮細胞粘膜固有層を透過

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