薬みえ3-2
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➡●チミジル酸/チミジン一リン酸(dTMP):thymidine monophosphate ●フルオロウリジン三リン酸(FUTP):fl uorouridine triphosphate ●ジヒドロピリミジン脱水素酵素(DPD):dihydropyrimidine dehydrogenas ●フルオロウリジン一リン酸(FUMP):fl uorouridine monophosphate ●フルオロウリジン二リン酸(FUDP):fl uorouridine diphosphate ●ウリジル酸/ウリジン一リン酸(UMP):uridine monophosphate ●デオキシウリジン一リン酸(dUMP):deoxyuridine monophosphateUFF●この他,FUDPから生成されるFdUTPなどがDNA鎖に取り込まれ,DNA鎖切断などをきたす機序もあるとされる.(5-FU)類似構造全ての細胞周期S期S期悪性腫瘍と薬細胞障害性抗がん薬Pharmacology vol.3 : An Illustrated Reference Guidecolumn+αもっとわかる353UMPdUMPdTMPDNA合成素材として利用される.OOHHNNOOHHNNNHNHFFFFFFFFNHNHOOOOFUMPFFUDPFFdUMPFTS阻害によるdTMP合成阻害DNA合成素材が足りない.DNA複製ができない.FUTPFRNA鎖に取りこまれる.RNARNA機能障害 チミジル酸合成酵素(TS)を阻害 フルオロウラシル(5-FU)の作用機序●フルオロウラシル(5-FU)は,ピリミジン塩基であるウラシル(U)に類似した構造をもつ.●5-FU自身がピリミジン合成経路で代謝されることで,生理的基質(dUMP)に拮抗し,核酸合成を阻害する.●主な作用は,代謝を受けて活性体(FdUMP)となり,チミジル酸合成酵素(TS)を阻害することである(時間依存性の作用で,持続点滴静注により得られる).また,FUTPに変換されることで,RNA鎖に取り込まれ,RNAの機能障害も引き起こす(濃度依存性の作用で,急速静注により得られる).生理的なピリミジン合成経路細胞分裂(がん増殖)ソリブジンは,1993年に発売された抗ヘルペス薬です(商品名:ユースビル).当時のヘルペス感染症の第一選択薬であったアシクロビルでは効果のないEBウイルスにも有効な薬として有望視されていました.しかし,発売後1年足らずの間に,フルオロウラシル(5-FU)との併用による重篤な副作用で,15名もの死亡が確認され,販売中止(自主回収)となりました.重篤な副作用の原因は5-FUとの相互作用にあります.ソリブジンは,5-FUの薬物代謝酵素であるDPD〔p.354〕を阻害するため,併用により5-FUの血中濃度が上昇し,骨髄抑制などの副作用が増強されてしまいました.被害が拡大した理由として,ソリブジンの治験段階で同様の相互作用による死亡例が3例確認されていたにもかかわらず,十分な情報提供,注意喚起がなされていなかったことや,当時は「がん告知」が現在ほど一般的ではなかったため,抗ヘルペス薬と抗がん薬を併用していることに気づかずに処方されるケースがあったことなどが挙げられています.薬の相互作用や患者の情報提供が十分になされ,適正に使用されていれば防ぐことができた被害であり,有用であったかもしれない薬を市場から消してしまった事件でもあります.この事件を受け,それまでは各製薬会社で異なっていた添付文書の「相互作用」欄の書式が統一化されるなど,薬の適正使用のための制度が大きく見直され医療情報科学研究所ました. チミジル酸合成酵素(TS)フルオロウラシル(5-FU)の作用機序持続点滴静注フルオロウラシル細胞死(がん縮小)急速静注急速静注で投与し血中濃度を高めると,FUTPが生成される.(蛋白合成障害)適正使用・情報提供の重要性̶̶ソリブジン事件を教訓に

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