薬みえ2-2
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➡●アルギニンバソプレシン(AVP):arginine vasopressin ●抗利尿ホルモン(ADH):antidiuretic hormone ●熱ショックタンパク質(HSP):heat shock protein ●デオキシリボ核酸(DNA):deoxyribonucleic acid ●糖質コルチコイド応答配列(GRE):glucocorticoid responsive element ●アクチベータータンパク質1 (AP-1):activator protein-1 ●核内因子κB(NF-κB):nuclear factor κB ●メッセンジャーリボ核酸(mRNA):messenger ribonucleic acidHSPHSPHSPHSP●この他,糖質コルチコイドは,AP-1,NF-κBなどの転写因子(炎症性サイトカインの作用を受けて細胞内に生じる)の働きを阻害する.これにより,抗炎症作用を示すと考えられている.●また,核内受容体や遺伝子発現調節を介さない効果(non-genomic eff ect)もあるといわれている.❶❷❸核受容体内分泌系の疾患と薬*ステロイドホルモンの受容体は核内受容体スーパーファミリーに属する〔薬④p.28〕.副腎皮質ホルモンPharmacology vol.2 : An Illustrated Reference Guidecolumn+αもっとわかる157GREmRNA❶ステロイドホルモンの受容体は,2分子の熱ショックタンパク質(HSP)が結合した状態で細胞質内に存在している*.❷糖質コルチコイドは細胞膜を通過し,細胞質で受容体と結合する.❸糖質コルチコイドが結合すると,受容体の分子構造が変化し核内に移行できるようになる.❹ステロイド-受容体複合体は,2量体となり,かつHSPが解離して受容体のDNA結合部位が露出することで,標的DNAの特定の配列(GRE)に結合し,遺伝子の転写を促進または抑制する.❺その結果,蛋白質合成の促進または抑制が起こり,様々な生理作用をもたらす.※受容体からのHSPの解離,および受容体の2量体化がどのタイミングで生じるかは不明である.「ステロイドは使いたくありません.とてもこわい薬だと聞いたことがあるので….」医療の現場にいると,誰もが一度はこのような声を聞くのではないでしょうか?ステロイド投与の際には,本書でも解説しているように,多くの副作用〔p.159〕に注意が必要なことは事実です.それらの中には感染症,糖尿病など重篤なものもあり,また,残念ながら現時点では全てを予防することはできません.では,ステロイドは使わないほうがよいのか?というと,初めて使われてから約80年,ステロイドを使わない診療科はほぼないくらい,現在も多くの疾患に用いられています.それはなぜでしょうか?その理由として,まずステロイドの強力な効果が挙げられます.ステロイドは強力な抗炎症作用・免疫抑制作用をもっています.副作用のデメリットを差し引いても,有益な作用があることが,ステロイドが多く使用される最大の理由といえます.次に,副作用対策の進歩があります.ステロイドをより安全に使うため,投与法〔p.162〕の工夫や全身への作用が少ない製剤〔p.161〕の開発など様々な対策が行われてきました.現在では“最大の効果,最小の副作用”となる投与を行うことが一般的になっています.また,副作用対策として,予防薬投与(骨粗鬆症など〔p.109〕)も必要に応じて行われます. ステロイドは強い効果と副作用をもつ,「両刃の剣」といえます.本来全ての薬剤はそのような二面性をもっていますが,ステロイドはその両面が強力であるがゆえに,話題になることが多いともいえます.しかし,むやみにこわがり,ステロイド治療を避けることは,患者さんにとって最適な治療の機会をのがすことにもなりかねません.ステロイドは,これまでもたくさんの難治性疾患に対する治療の切り札となってきました.そのメリットを最大に発揮させるためにも,副作用や注意点を十分に理解し,“最大の効果,最小の副作用”で正しく使っていくことが大切だといえるでしょう.DNA結合部位DNA糖質コルチコイド細胞膜細胞質❹転写調節❺蛋白合成ホルモン作用医療情報科学研究所ステロイドは本当に「こわい薬」か?Supplementステロイドホルモンの作用機序●糖質コルチコイドを例にステロイドホルモンの作用機序を示す.

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