薬1-2版_立ち読み
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β2α1α1を刺激する●血管平滑筋は,α1作用により収縮(血管収縮)し,β2作用により弛緩(血管拡張)する〔p.20〕.●ある臓器の血管がα1とβ2のどちらを優位に発現しているかによって,その臓器の血管の反応が異なってくる.●アドレナリンは,これらの他,局所止血(鼻出血,外創,手術時など)や,局所麻酔薬の作用延長〔p.84〕に使用される.●交感神経興奮時には,神経終末からNA,副腎髄質からADが分泌され,β1作用により心拍出量が増加する.●このとき,“闘争や逃走”〔p.18〕に重要でない臓器(消化管,皮膚,粘膜)の血管はα1受容体を優位に発現するため収縮して血流は減少する(NAの作用).●一方,“闘争や逃走”に必要な臓器(心臓,肺,骨格筋)の血管は,β2受容体を優位に発現するため拡張し,血流は増加する(ADの作用).●このようにして,“闘争や逃走”に必要な臓器への血流が優先的に増加しやすいようになっている.自律神経系に作用する薬●β1作用で心臓を強力に刺激する.●β2作用で気管支を拡張する.●α1作用とβ1作用で血圧を上げる.●α1作用で末梢血管抵抗を上昇させる.アドレナリン作動薬α1作用 < β2作用β2受容体を優位に発現する血管α1作用 > β2作用α1受容体を優位に発現する血管●心臓(冠状動脈)●肺●骨格筋●皮膚,粘膜*●腎●腹部内臓*皮膚,粘膜の血管は,α1受容体のみを発現している.このためアドレナリンは,皮膚,粘膜の血管に対しては,純粋に血管収縮薬として作用する.アドレナリンがこれらの部位の局所止血(鼻出血時など)や,局所麻酔薬の作用時間延長目的にも使用されるのはこのためである.Pharmacology vol.1 : An Illustrated Reference Guide33 切り札的存在 αβ受容体刺激薬の適応●アドレナリン(AD)とノルアドレナリン(NA)は,投与経路が限られていること,作用持続時間が短いこと,受容体選択性が低いことなどから,臨床上の使用は限られたものになっている(これらの欠点を改善した薬物が数多く開発されている)〔p.30〕.●しかし,アドレナリン受容体の本来のリガンド〔p.4〕であることから,その作用は強力かつ速効性であり,次のような病態・疾患に対しては非常に有用である. α1が多いか,β2が多いかによる 交感神経興奮時の血管の反応アドレナリンノルアドレナリンノルアドレナリン血管平滑筋を収縮させる.収 縮逆強力な薬理作用アドレナリンどちらも刺激する作用は血管平滑筋を弛緩させる.拡 張一刻を争う重篤な疾患・病態心肺蘇生時気管支けいれん(重篤な喘息発作など)アナフィラキシーショック敗血症性ショック●:α1受容体●:β2受容体第一選択薬として使用する理由心臓が動いていない.気管支が吸入薬も届かないほど狭窄する〔病④p.156〕.血圧低下,気道狭窄が同時に起こる〔病⑥p.48〕.末梢血管抵抗が著明に低下し,血圧が下がる〔薬③p.277〕.

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